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Byrds の名曲から拝借のいかしたタイトルにストレートなサブタイトルを添えて1975年にリリースされたオーストラリアからの1960年代中期プロトパンクを意識した最初期
(多分初) の編集盤で、ヴォリューム2まであり、抜粋版の CD 編集盤もありますが、何と言っても、これの凄いところは、まず
v/a Pebbles より早いってところですね。
1972年に v/a Nuggets がリリースされ、時を同じくして1974年に Decca からリリースされた U.K. パンク・コンプ
v/a Hard Up Heroes。これらにいち早く刺激を受け、イギリス、アメリカというロック大国以外から先陣を切って発信されたパンク・コンプで、この編者 Glenn A. Baker という人物はかなりの切れ者。ロック大国 = UK/US という図式はあるものの、ブリティッシュ・カルチャーがダイレクトに流入したという事実も大きいだろうが、ここオーストラリアも全く引けを取っていないどころか、プロトパンク大国だったって事は、その後の数々の編集物などで既に立証済み。更に、彼は v/a Pebbles でお馴染みの Bomp と時を同じくして1979年にスタートし怒涛のリリースを見せた
Raven のボスでもあるんです。
内容はというと、意図的かどうかはともかく、国内外でも人気のあった Master's Apprentices, Missing Links などはカットされ、海外からはオブスキュアなグループ全32組の32曲を収録。
第1面では、クールなロッカー Billy Thorpe + Aztecs による Coaster "Poison ivy" に始まり、Tiny Topsy "Just a little bit" をカヴァーしてるのは、あらゆるコンピに引っ張り凧の Tony Worsley + Blue Jays、このザ・ブルージェイズは、国内の他のアーティストとも数多くかかわりを持ったスタジオワーク中心のグループで、女性ティーン・シャウター Toni McCainn のサポート経験もある。彼らの単独作品は、Fabulous Blue Jays 名義で v/a At the Club に収録。Johnny Young + Kompany は、Easybeats "Step back" を好カヴァー。後に Wild Oats と成る R&B を得意としていた Jeff St. John + ID は、元 Missing Links の Peter Ausen 在籍のバンド。
第2面に収録の Marty Rhone + Soul Agents による Bill Haley & his Comets "Thirteen women" のカヴァーは様々なコンピで耳にする Renegades のヴァージョンより数段いい出来。そして
v/a Ugly Things vol.3 にも収録されている R&B レイヴ・アッパー Steve + Board は、彼らのファーストアルバムのタイトルにもなってる "Giggle eyed goo"、そして Purple Hearts による trad.-via-Graham Bond Organization "Early in the morning" は、アラビックな音階が強調されたアレンジで他のヴァージョンとは一線を画してます。
第3面では、やっぱりオーストラリアにもいた覆面グループ Mystrys、v/a Diggin' Up Down Under にも収録されたバブリーでジャングリーなパンクナンバー
"Witch girl" が収録されているが・・ ここで彼らの悲しい逸話を、元々メルボルンで Untouchables として活動し、その後新バンド名 Mystrys と夢を抱いていざ首都シドニーヘ、しかし既に Misterians, Mistics など少なくともそれ系のグループ名が5つ程あったらしく、覆面で差別化を図ってみたもののグループ名が同化してしまうなどで思ったほど話題にもならずあえなく数ヶ月で姿を消してしまったとか・・ トホホ。
第4面では、 Missing Links の名曲 "Drivin' me insane" を作曲した Barden Hatchins も在籍した Showmen が、ここではそこそこの R&B を演っているが、v/a Ugly Things vol.3 収録のブルーズハープ吹き荒れる R&B パンクはとにかくカッコいい。そして、大好きなニュージーランド出身の Librettos は、v/a Diggin' for Gold vol.5 収録のクレイジーダンス・ビートパンク "She's a go go" がむちゃカッコいいけど、ここでは Paul Revere & The Raiders "Kicks" をカヴァー、こんなんも演ってるんですね。最後に、激プリミティヴでロウな
Blues Rags 'n' Howler (むちゃいかしたグループ名!)は、Muddy Waters "Just wanna make love to you(恋をしようよ)または(君を愛したい)" を激ロウに好演!また、v/a
Diggin' for Gold vol.5 には Slim Harpo "Got love if you want it" のカヴァーが収録されており、2曲とも曲感はほとんど同じで、ドラムはスネアとバスドラ中心に、タムはほとんど使わずハイハットも使ってんだかどうだか。そんなクルードでプリミティヴなドラムに、ジャキジャキとリフを刻み続けるギター、ランニングする事なくひたすらルートを弾き続けるベースが全てユニゾン!そこにウェイリン・ハープも聴かせるスナッティ・ヴォーカルが乗っかる。彼らは天然なのかもしれないが、聴いた印象では明らかにプリミティヴなダイナミズムを突き詰めた結果出来上がったスタイルって感じがするけど、もしそうなら見事というしかない。しかし彼らが残した音源はこの2曲だけのようで少々残念。
May 2002 monaural66
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